新型コロナウイルス 予防接種

熱がでた。

 

昨日の十一時ごろ摂取し36時間後だ。

それまでの副反応は腕の痛みだけだったが、その痛みもつらい。半分も上がらないと聞いていたが、僕の場合は普通にしていてもずきずきとした痛みが走る。と、そろそろ腕がきつくなってきたのでここまでで。

マスターのぼやき1

 先日はてなブログからおしかりのメールをいただきました。最後の更新から一か月が過ぎましたからそろそろ新しい記事を書きませんかという内容です。実は私は大学生なのですが、先日、大学のある県にも緊急事態宣言が出てしまい、オンライン授業という慣れない制度の下授業を受けなければならず余裕がなかったので更新がなかなかできないどころか、本を読む機会も少なくなっていたので紹介する、このブログに書き込むネタがなくなっていました。

 ということで、特に書き込む内容がない時に何かしら書き込むために、新しいコーナーを作ることにしました。それがこの「マスターのぼやき」コーナーです。以前このブログでもFateTYPE-MOONについて書いたことがあったかと思いますが、私自身が型月のファンでもあります。このコーナーでは型月作品に関する何気ない「ぼやき」を書き込んでいくという誰得コーナーになります。

 さて、型月作品の中で私が好きな作品は、Twitterの方からこのブログにきてくださった方は分かっているかと思いますが、「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」シリーズです。ですが、第一回に「事件簿」について語るのはいささか敷居が高いというか、知らないという方も多いかと思いますので、最初はFate/Grand Orderについてお話ししようかなと思います。

 僕がFGOを始めたのはおよそ三年と半年前のことだったかと記憶しています。Fateファンだと言っておきながらリリース開始時ではないのかといわれてしまうと耳が痛い限りなのですが、おそらくそのような(民度の低い)方はこのような記事は見ないかと思いますので閑話休題。最初のサーヴァントはマルタでした。当時すでにstay nightをプレイしていた私はヘラクレスを狙っていたのですが、坂本みねぢ氏がイラストレーターであったということもありマルタのままゲームを進めることを決めました。いま確認してみたところ、2018年の9月6日に始めたようです。マルタの後に入手した星四以上のサーヴァントを順にいくつか書いていくと、デオン、アストルフォ、マルタ(水着)、武則天アビゲイル葛飾北斎となります。僕は推しが出るまで石を貯め続ける人間なのですが、それが顕著に表れているのがこの最初の部分であると言えます。もちろんエルメロイⅡ世を虎視眈々と狙っていたのですが、なかなかピックアップされず、その前に葛飾北斎のピックアップが正月にあったので、これまで永遠に石を貯め続けていたわけです。間の武則天アビゲイルは例外で、当時の知り合いにアビゲイルが欲しかったけど爆死したという人がいたので、じゃあ一回だけ引いていいよといって差し出したら出てきたという曰く付きのサーヴァントです。当然殴られました。

 さて、やっとエルメロイⅡ世が僕のもとを訪れたのは昨年の三月のことです。それまでにピックアップは事件簿コラボの直前にありましたがあえなく爆死。その後来た事件簿関連のサーヴァントをことごとく引けず、当時ストーリーも全然進めていなかった私はイベントにも参加できなかったのです。なのでグレイも持っていません。ですので現在、事件簿コラボ復刻まで絶賛ガチャ禁期間ということで、最後にガチャを引いたのはモリアーティがピックアップされていた時です。結構最近じゃん!と思われた方、実はモリアーティの前にガチャを引いたのはバレンタインイベの時、それも呼符一枚でカレンを出した時ですので、ある意味ガチャ禁に成功していると言っても過言ではありません。という感じでゆるくガチャ禁をし続けて現在石は462個、呼符は42枚です。しかし、事件簿コラボは一向に訪れる兆しはなく、おそらくこれから短くても1か月は来ないことが確定しています。そのうえ、次のアヴァロン実装時にやってくるサーヴァントの候補として私の中で最有力なのがサー・ケイ。そう、グレイの魔術礼装と強いかかわりを持つ彼です。もしサー・ケイであれば私は本気でガチャを引き始める気がしますので、さて石は足りるのか、事件簿コラボには早く来てくれないと、私の精神衛生が心配になってくるほどです。事件簿関係のサーヴァントをそろえるまでは僕のFGOは始まらないので、何としてもそろえなくてはなりません。

 このコーナーどうやって終わればいいんだろう……

 以上!誰得!マスターのぼやきのコーナーでした!

第三回 創作 思いついた物語の出だしをただ書きなぐっただけ

大学の講義で、教授は言った。

「文章を書いたときには、その文章の参考にした文献を最後に参考として記しなさい」

あれは、僕が大学に入学して最初の講義でのことだ。

僕は中部地方の私立大学で文芸学を学んでいる。そのため、僕が大学で書く文章といえば、それはやはり小説だ。実際は、小説などと言える代物ではない。ただの空想の羅列であり、文字列はどれもがどこかで見たことのあるような文字列だ。だが、僕はそれを小説だと思っているし、それに対して異論反論は認めない。

参考文献を記すのは、論文だけではなく、小説にも共通している。

その小説を書くために参考にした本を記さなければならない。

ならば、ならば僕が書く小説は、おそらく本文よりも参考文献の方が長くなってしまうだろう。

僕が、たった数百枚の原稿用紙を埋めるために、今まで読んできた数百冊もの本の力は必要不可欠だったのだから。

僕の文章は、僕がこれまで読んできた数多の本に書かれた言葉の集合だ。

僕の物語は、僕がこれまで集めてきた数多の本の集積だ。

僕を形作る物は、僕がこれまで触れてきた数多の本の結晶だ。

だが、これは。これから語るのは、これから僕が並べる文字列は、まぎれもなく、どうしようもなく、どうあがいても、僕だけの文章で、僕自身の物語で、誰の助けもない。僕だけだ。

だから、この小説に参考文献は存在しない。あるいはこうも言える。これは、本当に、僕がこれまで読んできた本すべてによって作られた物語であると。

 

えーと、続きを書くかどうかはまだ決まってないけど、コメントくれたりしてくださったらモチベ上がるかもしれません。(他力本願)

 超動く家を読みながら

紹介 第四回 『四畳半神話大系』 森見登美彦 角川文庫

 あまりにも語りつくされたような作品故、ここで紹介しようかどうか非常に悩んだ一冊です。森見登美彦さんの「四畳半神話大系」を今回はご紹介します。

 本書は何処からがネタバレでどこからが違うのか、その境界線があまりにも分かりにくい作品である。正直僕は、本書を書店で売る際に内容に触れる帯をつけないでほしいし、裏側のあらすじも読まないでほしい。アニメ化しているけれど、絶対に見ていない状態でまずは本書を読んでもらいたいと思う。となると、察しのいいガキである皆様にはお分かりいただけるだろうが。(暴言じゃないよ)この中で本書の内容については一切触れない。もし、この記事を見てくださっている方々の中に本書をまだ読んでいないどころか、タイトルもこれで初めて知ったという、書を捨ててに街に出ているような寺山修司的な方がいたとしたら、(そのような方にはこのネタは通じないかもしれないけど)そのような方にこそ、僕はまさに本書を読んでいただきたいので、さて、私のなけなしの書評力の見せどころというわけになる。

 では、どのようなことを紹介するかと言ったら、もう表紙とタイトルから紹介していくしかないわけである。「四畳半神話大系」まあ、大層なタイトルである。(たいそうとたいとるってなんか語呂が良い)神話の大系である。いやあ、これだけだと読みたいと思わない。けれどその前、四畳半というのは非常に親しみ深いのではないだろうか。あくまで僕の主観だが…… 今時四畳半の部屋なんてのは珍しいから、親しみやすくもないのかもしれない。とにかく、神話大系といういかにもな仰々しい文字列を、四畳半という庶民的な、まあ言ってしまえば貧乏くさい文字列が軽減してくれているのである。さて、もう一度、タイトルを見てみよう。「四畳半神話大系」想像すると、なかなかコミカルではないだろうか。四畳半という狭い部屋の神話の大系である。まさに本書の内容はそのままだ。

 表紙の絵にも四畳半の部屋が描かれており、その中心にいかにも不健康そうなやせている男が寝っ転がっている。この、いかにもバトル漫画の初めに死にそうな男こそが本作の主人公である。さらにその上に大きく描かれた双眼鏡を持った女性。そして、その下には(帯がついていたら多分帯に隠れている)人間とは思えないような小さな男が四畳半に侵入している。四畳半には、ご存知の通り五つの畳が敷かれているが、本書の表紙ではその五つの畳にそれぞれ違う風景が描かれている。これこそが、本作のすべての内容を示している。読んでもらえばわかる。読まないと、分からない。

 森見登美彦という作者の名前も大変目を引く字面だ。ここまで特徴的なペンネームの作家は、おそらく京極夏彦有栖川有栖、燃え殻くらいのものだろう。

 はあ、内容に触れずに書くのがすごく大変だ。

 もし、ここまでの内容で興味を持ってくれた方は、ひとまず本屋さんへ行き、冒頭だけでも読むことだろう。あるいは、ネット時代の今日、Amazonで購入するのだろうか。僕は断然前者派だが、聞いてない? ああそう。 と、Amazonでも冒頭を読むことは可能だと聞いたことがある。となったとき、まず初めに見るのは目次だろうか。僕の友人に目次を読まないという人がいたけど、僕はちゃんと目次を確認する。目次を読むと、本書が全四章で構成されていることがわかるだろう。

第一章「四畳半恋ノ邪魔者」

第二章「四畳半自虐的代理代理戦争」

第三章「四畳半の甘い生活

最終章「八十日間四畳半一周」

 うん。この段階で心躍り本書をレジへともっていく人は、僕の友達だ。

 だって、もう面白いの分かるじゃん。なぜか作者はひたすらに四畳半を強調してくる。しかも、わざわざ小説を書いてまで言っていることが、恋の邪魔者の話。(わかる)自虐的代理代理戦争の話(まあ、分かる?)甘い生活の話(分かる)八十日間かけて四畳半を一周するという話(なにいってんのかわかんねえ)である。これを買わずして、何を買うのかという話である。四畳半って、分かんない人検索してみてほしいんだけど、とにかく狭いのよ。そこを一周するのに八十日間かけるとはこれ如何にということ。もう気になって気になって仕方がない。あと、自虐的代理代理戦争。口に出していってみて、とにかく口触りがいい。言ってて気持ちいい。ちなみにこの作者。四畳半がなぜかすごく好きなのである。ありとあらゆる文章に四畳半が頻出する。どうやら、作者自身が学生時代に四畳半のアパートに住んでいたとかいうもっぱらの噂。

 これね、あらすじを細かく説明すれば読みたいって思う人がほとんどだと思うんだけど、これはね、前述したとおりなにも知らずに読んだ方が絶対に楽しいから、ぜひ、何も知らないあなたに読んでもらいたい。特に、日々の生活に疲れているそこのあなた!退屈なそこのあなた!最近笑っていないそこのあなた! そんな人たちにお勧めしたい。

 本書は普段文字を読まない人でも、読みやすい文章だと思う。内容はとてもコミカルだし、テンポのいい言葉遣いで次から次へと言葉が頭の中に入ってくるから。

 

 では、今日はこの辺で。最近、ブログ内でのキャラを模索中です。いや、迷走中かな。

 本を読んで面白いと思ったら、アニメの方もおすすめです。小説とは、また違った内容になっていて、さらに監督はあの湯浅政明。けど注意。絶対にまずは小説の方から読んでね。

 「道化師の蝶」を読みながら。

 

 

第二回 創作 二次創作 『ふたりの魔術師、ふたりの探偵』

 この文章は、三田誠氏の小説『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』と、その小説と世界観を同じくするゲーム『Fate/stay night』の二次創作である。作品内に登場するキャラクターの関係上、『Fate/zero』の内容も若干含んでいる。なお、『事件簿』の軽いネタバレも含むのでご注意。では、興味のある方は、ぜひ読んでいただきたい。つたない文章であるのは失礼。初の二次創作作品として、『事件簿』を取り扱えて感謝の極み。三田誠氏、および、当作に出演してくださったキャラクターの皆様には心よりの感謝を。では、またあとがきで。

『ふたりの魔術師、ふたりの探偵』

 

 今日は、師匠と一緒に時計塔を離れ、フィールドワーク先への下見で、ある列車に乗っていた時のお話をします。

 これは、師匠が完全に、敗北した時のお話です。

「列車に乗っていると、なんだか魔眼収集列車の時を思い出しますね」

 師匠にとって、転機となったあの事件。そして、自分にとっても大きな転機となった事件。

「レディ、かの列車とこいつを一緒にしてはいけない」

「そうなのですか?」

 師匠は背筋を伸ばし、先程までくゆらせていた葉巻の火を消した。自然と、自分の背筋も伸びてしまう。

「そもそも、魔眼収集列車とこの列車は運営知っている場所が違うのだよ。魔眼収集列車は上級死徒が魔眼の蒐集、オークションのために運営している、そうだな、いわば列車はその会場に過ぎない。だが、この列車は魔術協会が魔術師用に運営しているただの移動手段に過ぎない。それに、魔眼収集列車は蒸気機関車をベースとしているのに対し、これは急行型列車をベースとしている。これらは、魔術的にも科学的にも根幹からしてまず違うものだ」

 師匠の話を聞きながら、自分はそれでも、それでもやはり、車窓を流れる風景を見ると思い出すのだろうと思った。かの列車のことを。

「それにだ、――――」

 師匠が言葉を続けようとしたその時だ。近くの客室から悲鳴が上がった。

「キャ――――」

 反射的に立ち上がってしまう自分だったが、師匠の方が私よりも早かった。

「行くぞ、グレイ」

 師匠はすでに個室のドアを開き、悲鳴の聞こえた方へと向かっていた。

 

 そこにはすでに人だかりができていた。師匠はそれをかき分ける。悲鳴の主は乗務員の女性だった。客室の前に尻餅をついて目を見開いていた。確かに、魔眼収集列車にはこんなにも大勢の魔術師はいなかった。

「通してもらおうか」

「あ、ああ」

「おい、あれ、ロード・エルメロイじゃないか?」

「え? あの現代魔術科の?」

「時計塔で抱かれたい男ランキング第四位のあの、ロード・エルメロイ?」

「ああ、間違いない。プロフェッサー・カリスマだ」

 相変わらず、異名の多い師匠は、そんな声に眉間の皺をより深くしながら、乗務員の女性に状況を尋ねる」

「あ、あの、あの向こうで――――」

 師匠の差し出した手を取りながら、反対の手で震えながら扉の方を指さす。

 女性を起こした後、師匠はその扉に近づいて中を覗こうとした。が、それは叶わなかった。なぜなら、ひとりの少年が、すでに扉にへばりついてのぞき窓を使って中の様子を覗いていたからだった。

 青みがかった黒い髪がまるでワカメのようにウェーブしているのが特徴的な少年だった。容姿端麗、眉目秀麗。まるで異国の王子のような見た目のその少年は、その整った顔をゆがめながら一生懸命にのぞき窓の奥を探って、やがて言った。

「ああ、死んでるね。これ」

 突如、人だかりがどっと湧く。悲鳴を上げるひと、写真を撮るためか携帯電話のカメラをこちらに向ける人。連れ添いの男性の胸に顔をうずめる女性。

 そんな彼らを、少年は憎々し気に睨み、先程悲鳴を上げた乗務員の女性の前に立った。その顔は笑顔だった。

「ねえ君さあ。ちょっと人払いしてくれないかな」

 師匠に手を差し伸べられたときは表情を変えなかったその女性が、少年に声をかけられてまるで恋する乙女のように頬を赤らめ、きらきらした目で彼のことを見つめていた。

 乗務員が周りのやじ馬たちを客室に戻るよう案内している間、少年はずっと客室の中を覗いていた。師匠がたまに使う砂のようなものや、自分にはよくわからない器具のようなものを使いながら。

 この列車に乗っている人は全員が魔術師であることは聞いていたが、まさか人死にの後にこんなにも冷静にいられる人がいるなんて思っていなかった。これじゃあ、これじゃあまるで、師匠のようだ。

 師匠も少年の行動に驚いているようで、目が大きく見開かれていた。

「さて、こんなところだ。あなたも見るかい? ロード・エルメロイ」

 

 師匠が一通りの調査を終えてから、自分たちは一度殺人の現場を離れて食堂車へと来ていた。

「私はロード・エルメロイⅡ世。こちらは内弟子のグレイだ」

「グレイ、です」

 少年は自分たちの自己紹介をつまらなさそうに、前髪を指でもてあそびながら聞いていたが、やがて、

「僕の名前は間桐慎二

と名乗った。

 またも、師匠が驚きの表情を見せる。先ほどよりも大きく、今まで見たこともないくらいに目を大きく見開き、手に持っていた葉巻を危うくテーブルの上に落とすところだった。

「間桐? 間桐雁夜……」

 師匠の口から、知らない人の名前が出る。

「あの、師匠? その人は……?」

「間桐雁夜。私も面識はないが、第四次聖杯戦争バーサーカーのマスターだった男だ。私と殺しあったかもしれない相手」

「雁夜? ああ、それ、僕の叔父さんだよ」

 間桐慎二はそんなことは今の今まで忘れていたとでもいうように、どうでもいいことかのように吐き出した。

「それよりさ、さっきの事件のことだけど」

 と、話を変える間桐慎二。ウェーブした髪を掻き上げ、師匠のことを面白そうに見る。

「この列車で起きたということは魔術師同士の事件だよね? ってことは、僕が効いた話では、ロード・エルメロイ。あなたの出番ってことになると思うんだけど」

「そうだな。なかなか興味深い事件だ。だが、その前に、私の名前には、二世をつけてほしい」

 いつものように、師匠は言った。

 間桐慎二は、ははっと笑って「やっぱ面白いわ」といった。

「えっと、今回はどんな事件なんですか?」

 たまりかねて、聞いてしまった。

 先ほど、事件の現場を調べているときから、師匠はずっと難しそうな顔をしていた。

「それが、分からないのだよ」

「分からない?」

「ああ、現場には、確かに死体があった。何の変哲もない、ただの死体だ。ただ、事件ならばおかしい」

「はあ、おかしいですか……」

「ああ、あの死体には、外傷が一切存在しなかった」

 外傷の無い死体。それの、どこがおかしいのだろう。

「魔術を用いればとても簡単だ。だが、そのような魔術を使用した痕跡が一切存在しなかった」

 今度こそ、自分にもおかしなことが理解できた。魔術師が殺され、その死体には外傷がなく、そして、そのような殺し方のできる魔術の痕跡はなかった。それぞれの要素が、微妙に合わさらない歯車のように、互いに互いを邪魔している。

「ねえ、ロード・エルメロイ二世。僕と勝負しないか」

 さっきまで黙っていた慎二が口を開く。

「勝負?」

「ああ、どっちが早く、この事件の犯人を捕まえられるかの勝負さ」

「なぜ、そんなことをしなければならないのかね?」

 ホワイ・ダニット。なぜか。

「簡単さ。いたって簡単。明快なことだよ」

「僕は今、この上なく暇なんだ」

 

 慎二と別れてから、再び自分たちの客席に戻る。師匠はずっと考えているようだった。

「外傷が存在しない。魔術の痕跡を消すなどということが可能なのか。いや、あるいは、ウェールズの時のような場合。いやいや、それこそあり得ない。私たちはこの場に初めて来たのだ。再演など不可能。ならば、どうやって」

「なぜ、あの人は死んだんでしょう……」

「なに?」

 つい、考えていたことが口をついて出てきてしまった。

「す、すみません。何でもありません」

 急いで謝るが、師匠はすごい勢いで肩をつかんできた。

「レディ、なんて言った」

「いや、あの、その、なぜ、あの人は死んだんだろう。と」

 答えると、師匠は肩をつかんでいた手を放し、立ち上がった。

「なるほど。そういうことか!」

「どういうことなのでしょう」

「ついてきたまえ。レディ」

 

 師匠に連れてこられたのは、事件が起きた客室だった。

「ここ、密室。なんですね」

「ああ、まあ、そんなことは魔術師相手には通用しない。私も先ほどまでどうしてだか、うっかりしていた。ここに乗っている客に、フーダニット、ハウダニットは通用しない」

ホワイダニット

「そう。なぜやったのか。それだけが、例外だ」

 そう言って、師匠は先ほど乗務員から預かったマスターキーでドアを開ける。ドアの先には、安らかな顔で眠っている一体の男の死体があった。

「どうやら、この男は宝石魔術の使い手だったらしい」

「どうして、分かるんですか?」

 不思議に思って聞いてみた。いくら師匠でも、死んだ相手を一目見てその人が使う魔術が

分かるなんてことは無い。

「この杖だよ」

 師匠はそう言って、遺体が大事そうに抱えていた杖を見せる。

 杖の柄の部分には、蛇やコガネムシのような虫がたくさん印刷してあって、先の持ち手の部分には何かをはめ込むための場所のような空洞があった。

「ここに刻印されている虫たちはすべて、古代エジプト文明とかかわりの深いものたちだ。宝石魔術は古代エジプト文明と大いに関係しているからな。それに、この空洞は、もともと宝石が入っていたもののようだ。わずかだが、魔術の痕跡がある。それに……」

「あるはずの物がない。でしょ?」

 突然、背中から声がした。驚いて振り向くと、そこには先ほどの乗務員を連れた慎二がいた。

「その通り。宝石魔術ならば、おそらくは多くの宝石を持ち歩いているはずだ。だが、この客車には何もない」

「と、言うことで、犯人はこいつだよ」

 慎二は親指で後ろの乗務員を指さす。一瞬、誰もが息を飲み込んだ。師匠でさえ例外ではなかった。

「――――いや、しかし、彼女には不可能だ」

「そうかなあ、なぜ、不可能と言いきれる?」

「この列車の乗員はみな魔術師だ。それは、乗務員だって例外ではない。しかし、ここの乗務員をやらなければならないということは、彼女はロクな魔術刻印を持っていないということだ」

 魔術協会が提供する、移動手段。本来は家を継ぐ魔術師が、この列車で働く理由。それは、ほかに働く場所がないから。

「そう。こいつの魔術刻印は下の下。まるで使い物にならない」

「ならば、ならばなぜ、彼女が犯人だなどと言える。そんな魔術刻印では、人を殺す魔術なんて使えるはずがないだろう」

 そう。いつだったか、師匠が講義で言っていた。魔術刻印こそが、魔術師を人たらしめる。

「その通り。使えるはずもない」

「ならば――――」

「だから、使わなかった」

 使わ、なかった?

「魔術師が魔術を使わなければいけないなんて誰が決めた? 正直、人殺しに関しては、魔術よりも銃やナイフを使った方が簡単だろ?」

 それは、あまりにも突飛で、だけど、いたってまともな意見だった。

「確かに。その通りだ」

 師匠が悔しそうに慎二の言を認める。いくら遊びでも、勝負と言われた以上、師匠も勝ちたかったのだろう。変なところで、意地っ張りなのだ。

 そんな師匠のことを知ってか知らずか、慎二は心底勝ち誇ったように鼻を鳴らした。

「こいつは毒薬使ってその人を殺した。魔術媒体用の、宝石を目当てに。そこにおいてあるグラスを調べればすぐにわかるよ。それに、こいつの乗務員室から宝石も見つかるはずだ」

 

 停車駅につき、乗務員の女性は素直に自分の犯行を認めた。師匠は、彼女を引き渡している慎二の姿を、何とも言えない表情で見ていた。

 この二人は、どこか似ている。自分がそんな風に思うのは、最後、師匠と慎二が別れ際に交わした会話のせいだろう。

 

「ロード・エルメロイ二世」

 そのまま去ろうとした師匠の背中に声がかかる。慎二の声だ。

「いや、ウェイバー・ベルベットと呼ぶべきかな。僕は一度、あなたに聞いてみたかったんだ。なぜ、あんたはあの聖杯戦争に参加した。そして、あなたの目標であった第五次聖杯戦争が終わった今でも、なぜ魔術の世界にしがみ続けている」

 これは、可能の助動詞をわざと除いて質問された。どうして、魔術の世界にしがみ続けていられる?と。

「それは……」

 師匠は、ロード・エルメロイ二世は、この質問になんと答えるのだろう。

「それは、いつか、君にも分かるさ。間桐慎二君。君は、昔の私にそっくりだ。魔術の才能もない。期待もない。ないない尽くしの少年だ。だからこそ、その答えは君自身が導き出すことだ。出会うべき人に出会ってな。それでは、さらばだ」

 師匠はそう言って、今度こそ歩き出した。師匠の背中は、なんだかとても、悲しそうで、けれどどこか、足取りは弾んでいた。

                               了

 

 あとがき

 ここまで、僕のつたない文章を読んでくださった皆様に、まずは感謝を伝えます。さて、なぜここであとがきがあるのかというと、本作の着想について語るために、ほんぶんを読んでいただかねばならなかったからです。

 僕は以前から『事件簿』の二次創作をやりたいと思っていたのですが、型月世界は広大過ぎて、どこから手を付けたらいいのか分からず、書けなかったのです。ある時、間桐慎二のプロフィールを見る機会があり、そこにはこう書かれていました。「名探偵」と。これを見たとき、型月世界における探偵が出会ったら面白いのではないかと思いました。書き進めていくうちに、彼らの共通点がいくつも見えてきて、結果としてこのラストに落ち着きました。はじめはぜんぜん違うオチを想定していたんですよ?

 一人称をグレイにするかどうかは本当に悩みました。二次創作なのだから、もっと面白い視点でもいいのではないか。いやいや、神の視点が一番書きやすい。そんな風に考えた結果、まずは原作に順守するという結論に至りました。しかし、書いてみると、グレイのキャラクターは非常に難しかった。何より、一人称がぐっちゃになる。本当に、三田誠氏はすごいなあと思いました。

 まだまだ、語り足りないですが、具体的には『事件簿』についてもっと語りたいところですが、それはまた、別の機会に。では、またお会いできる日を信じて。書くとしたら、また『事件簿』で書くと思います。またね。

紹介 第三回 『わたしの恋人』藤野恵美 角川文庫

 お久しぶりです。ここ数日、ブログの更新ができませんでした。文藝賞の締め切りや引っ越し、大学でのガイダンスといろいろあり、忙しかったのです。一段落着いたので、更新を再開します。また、よろしくお願いします。

 さて、第三回となった「紹介」のコーナー?ですが、今回は藤野恵美さんの『わたしの恋人』についてお話ししたいと思います。藤野恵美の青春三部作の第一作として発売された小説である。これはいわゆる恋愛小説というもので、実は僕、恋愛小説はあまり読まないのです。それでもいくつかは好きな作品があって、これはそのうちの一つ。

 この小説は、高校一年生の主人公 龍樹の家庭環境の描写から始まる。龍樹の両親は結婚して数十年たっているにもかかわらずいまだラブラブ。そんな過程で育った龍樹は、当然のように運命というものを信じている。それこそが幸せなのだと考えている。サッカー部員の彼は、部活の最中にけがをして保健室に行く。そこで、彼は運命と呼ぶべき出会いをする。森せつなとの出会いだ。くちゅんという彼女のくしゃみに、彼は運命を感じ取る。なんてかわいいんだ。心臓に衝撃が走る。これが、恋ということなのか。ということになる。運命というには、あまりにもエゴイスティックだ。けれど、そもそも運命の出会いなんてものは、エゴの塊だ。

 視点が変わり、当作のもう一人の主人公、森せつなの家庭環境の描写になる。彼女の両親は龍樹のそれとあまりにも対比的に描かれる。顔を合わせれば喧嘩ばかりしている両親のもとで育った彼女は、早く家を出て、ひとりで生きるのだと決意している。そんな彼女の頭の片隅にあるのは、昼間、自分の寝顔を見られたある少年のことだった。そう龍樹である。

 それから、二人の視点が交互に描かれ、それぞれがお互いのことを意識し始める。様々な障害、考え方の違い、家庭環境、それらを乗り越え、二人の関係の発展を実に美しく、みずみずしく描写していく。

 設定も、キャラクターもどれもがありきたり。奇抜さなんてなく、意外性もない。ただ、恋する二人の男女を丁寧に描くだけ。ただそれだけなのに、あまりにも強くその情景は、その文字列は、僕の心にしみわたってくる。それは、今はもう失われてしまった景色だからかもしれない。間違いなく、今、この時代にこのような恋愛はできないだろう。これは、日本の、人間の原風景。初恋、青春。そんなむずがゆくなるテーマを、徹底的なまでに追求し、丁寧に描かれている。この小説は、存在していることに価値がある。これから、このような恋愛小説は減っていくことだろう。文学の世界では、奇抜なもの、異常なものが受け入れられつつあるから。だからこそ、この作品には圧倒的な価値があるのだ。普段は恋愛小説なんて読まないっていう人にも、ぜひ読んでほしい。あまりにも甘い恋愛小説だが、その甘さは今の例えば日本の恋愛映画のような甘さではなくて、どこか懐かしい、口に不快感を残さない甘さだ。この小説は、心理描写や情景の描写を読むためだけに読んでも十分に満足のいくものだ。

昨今の流行

昨今の流行って何だろう。って考えたとき、やっぱり新型コロナウイルスなのかなって思う。世界的に「流行」してる感染症。ここでいう「流行」は感染者数が増えているっていうのもあるけど、文化的にも「流行」している。それが顕著に表れているのは文学の世界だろう。僕は今、王様のブランチのブランチブックという番組を見ているのだけれど、ついさっき紹介された本の内容が、コロナでライブが中止になってしまったバンドの姿を描くっていう内容だった。本屋さんに行っても、コロナの文字がそこら中にある。コロナの文字があると、確かに興味を惹かれる。それは事実だ。だけれど、僕はこの流行をいい物だとは思えない。文学でその時代その時代の状況を描くことは、本来とてもいいことだ。文化的にも、歴史的にも価値のある事。それを分かったうえで今の流行の仕方は首をひねらざるを得ない。テレビを見ていてもそうなのだけど、いかなる問題に対しても、「コロナ」の一言で片づけられてしまっている。会社がつぶれても、学校での成績が悪くても、すべて、コロナだから。それって、人間が考えることを放棄しているのと同じなのではないだろうか。そのような風潮が「流行」してしまうのは、とてもとても危ういことだと思う。何か大きな、理解のできないことが起きたら、すべての責任をそれに押し付ける。自らの責任は放棄する。

コロナへの責任転嫁。それが流行して、評価されるのはどうなんだろうね。