紹介 第四回 『四畳半神話大系』 森見登美彦 角川文庫

 あまりにも語りつくされたような作品故、ここで紹介しようかどうか非常に悩んだ一冊です。森見登美彦さんの「四畳半神話大系」を今回はご紹介します。

 本書は何処からがネタバレでどこからが違うのか、その境界線があまりにも分かりにくい作品である。正直僕は、本書を書店で売る際に内容に触れる帯をつけないでほしいし、裏側のあらすじも読まないでほしい。アニメ化しているけれど、絶対に見ていない状態でまずは本書を読んでもらいたいと思う。となると、察しのいいガキである皆様にはお分かりいただけるだろうが。(暴言じゃないよ)この中で本書の内容については一切触れない。もし、この記事を見てくださっている方々の中に本書をまだ読んでいないどころか、タイトルもこれで初めて知ったという、書を捨ててに街に出ているような寺山修司的な方がいたとしたら、(そのような方にはこのネタは通じないかもしれないけど)そのような方にこそ、僕はまさに本書を読んでいただきたいので、さて、私のなけなしの書評力の見せどころというわけになる。

 では、どのようなことを紹介するかと言ったら、もう表紙とタイトルから紹介していくしかないわけである。「四畳半神話大系」まあ、大層なタイトルである。(たいそうとたいとるってなんか語呂が良い)神話の大系である。いやあ、これだけだと読みたいと思わない。けれどその前、四畳半というのは非常に親しみ深いのではないだろうか。あくまで僕の主観だが…… 今時四畳半の部屋なんてのは珍しいから、親しみやすくもないのかもしれない。とにかく、神話大系といういかにもな仰々しい文字列を、四畳半という庶民的な、まあ言ってしまえば貧乏くさい文字列が軽減してくれているのである。さて、もう一度、タイトルを見てみよう。「四畳半神話大系」想像すると、なかなかコミカルではないだろうか。四畳半という狭い部屋の神話の大系である。まさに本書の内容はそのままだ。

 表紙の絵にも四畳半の部屋が描かれており、その中心にいかにも不健康そうなやせている男が寝っ転がっている。この、いかにもバトル漫画の初めに死にそうな男こそが本作の主人公である。さらにその上に大きく描かれた双眼鏡を持った女性。そして、その下には(帯がついていたら多分帯に隠れている)人間とは思えないような小さな男が四畳半に侵入している。四畳半には、ご存知の通り五つの畳が敷かれているが、本書の表紙ではその五つの畳にそれぞれ違う風景が描かれている。これこそが、本作のすべての内容を示している。読んでもらえばわかる。読まないと、分からない。

 森見登美彦という作者の名前も大変目を引く字面だ。ここまで特徴的なペンネームの作家は、おそらく京極夏彦有栖川有栖、燃え殻くらいのものだろう。

 はあ、内容に触れずに書くのがすごく大変だ。

 もし、ここまでの内容で興味を持ってくれた方は、ひとまず本屋さんへ行き、冒頭だけでも読むことだろう。あるいは、ネット時代の今日、Amazonで購入するのだろうか。僕は断然前者派だが、聞いてない? ああそう。 と、Amazonでも冒頭を読むことは可能だと聞いたことがある。となったとき、まず初めに見るのは目次だろうか。僕の友人に目次を読まないという人がいたけど、僕はちゃんと目次を確認する。目次を読むと、本書が全四章で構成されていることがわかるだろう。

第一章「四畳半恋ノ邪魔者」

第二章「四畳半自虐的代理代理戦争」

第三章「四畳半の甘い生活

最終章「八十日間四畳半一周」

 うん。この段階で心躍り本書をレジへともっていく人は、僕の友達だ。

 だって、もう面白いの分かるじゃん。なぜか作者はひたすらに四畳半を強調してくる。しかも、わざわざ小説を書いてまで言っていることが、恋の邪魔者の話。(わかる)自虐的代理代理戦争の話(まあ、分かる?)甘い生活の話(分かる)八十日間かけて四畳半を一周するという話(なにいってんのかわかんねえ)である。これを買わずして、何を買うのかという話である。四畳半って、分かんない人検索してみてほしいんだけど、とにかく狭いのよ。そこを一周するのに八十日間かけるとはこれ如何にということ。もう気になって気になって仕方がない。あと、自虐的代理代理戦争。口に出していってみて、とにかく口触りがいい。言ってて気持ちいい。ちなみにこの作者。四畳半がなぜかすごく好きなのである。ありとあらゆる文章に四畳半が頻出する。どうやら、作者自身が学生時代に四畳半のアパートに住んでいたとかいうもっぱらの噂。

 これね、あらすじを細かく説明すれば読みたいって思う人がほとんどだと思うんだけど、これはね、前述したとおりなにも知らずに読んだ方が絶対に楽しいから、ぜひ、何も知らないあなたに読んでもらいたい。特に、日々の生活に疲れているそこのあなた!退屈なそこのあなた!最近笑っていないそこのあなた! そんな人たちにお勧めしたい。

 本書は普段文字を読まない人でも、読みやすい文章だと思う。内容はとてもコミカルだし、テンポのいい言葉遣いで次から次へと言葉が頭の中に入ってくるから。

 

 では、今日はこの辺で。最近、ブログ内でのキャラを模索中です。いや、迷走中かな。

 本を読んで面白いと思ったら、アニメの方もおすすめです。小説とは、また違った内容になっていて、さらに監督はあの湯浅政明。けど注意。絶対にまずは小説の方から読んでね。

 「道化師の蝶」を読みながら。